SD閑話-9  2010年10月25日 松本憲洋(POSY Corp.) 
タイトル:「若者よ、SDSへ入会して活躍しよう


システム・ダイナミックスは、MITのフォレスター教授が創案されたこともあり、システム・ダイナミックス学会(SDS:System Dynamic Society)は1983年にボストンで創設されました。大会は毎年USAかあるいはそれ以外の国で開催され、200編以上の論文が発表されています。学会の論文集”System Dynamics Review”はそれとは別にWiley & Sonsから発行されています。

このところの会員数は1000人強ですが、毎年更新する仕組みですから、更新を怠ると会員資格がなくなります。会計年度は海外の通常のやり方で暦年と同じ、1月開始12月終了になっていますから、10月から次年度会員の更新手続きが始まりました。私も先日更新手続きを済ましたところです。

世界に向けて開かれた学会として、会費の設定方法は、ある意味では合理的、ある意味では煩雑な方法が2007年ごろから採用されています。王其藩教授(同済大学:Tonji Univ.と復旦大学:Fudan Univ.)が2006年から2008年にSDSの会長を務められましたが、そのときに以下のように、各自の収入(所得)によって各自の会費額を自己申告する方法に変わりました。

その前は、一般会員が100ドル前後で均一だったと記憶しています。
 


 

3、4年前のことなので、はっきりとは覚えていませんが、王会長のメッセージ・メールの要旨は以下だったように記憶しています。

“中国は個人の収入が少ない。したがって、SDSの年会費を払うことが難しい人が多い。個人の収入に応じて会費を決めれば、中国や発展途上国からも多くの人がSDSに参加できる。したがって、今回、会費の新制度を導入する。”

この会長通達を読んだときに、斬新で合理的だと感じた半面、自国民のために会長として利益誘導的なことをあからさまによくも実施するなあという違和感を持ちました。しかしながら、この制度は定着して今年も実施されています。

当時の日本、中国、韓国の記録を保管していないのですが、現在の会員数は分かります。日本20人、中国49人、韓国19人です。王教授の決定が中国には効果的であったのかも知れません。

さて、このシステム・ダイナミックス学会には、幾つかのChapter(支部)とSIG Special Interest Group)があります。前者は、国や地域単位で設置されるのがほとんどですが、EconomicsStudentのように属性単位で構成されるものもあります。日本支部(Chapter of Japan System Dynamic)は、1990年のSDS理事会で承認された最初の支部です。一方後者は、同じ興味を持つ人々の集まりで、SDSの会員であるなら、原則的にどのSIGにでも参加できます。


話は変わりますが、最近、MBAやそれに類するコースのある大学院の学生で、修士論文や博士論文を作成するに当り、システム・ダイナミックスを方法論として使う方が、わずかではありますが増えているように感じています。また、そのような大学の先生方で、考える方法論としてシステム・ダイナミックスを学生に身に付けさせた上で卒業させたいと考えているとお話になる方も増えているように思います。

地球の周りを取り巻く情報ネットワークにより、多方面からの影響を直ちに受けるだけでなく、情報ループのノードとしてフィードバック信号にも絶えず曝されている状況です。したがって、1980年代以前のように、先の目標に向かって熟慮して立案した計画を粛々と進めるだけでは幸せな結果は得られません。

状況の変化を読んでそれに適応するための行動について思考を絶えず繰り返し、戦略あるいは戦術の変化のための適切な判断をして、予測と結果とを比較しながら行動する必要があります。

そのためには、システム・ダイナミクスについて学習し、システム・ダイナミックスを考えるための方法論としての採用することは理にかなっていると思います。

SDSの年会費も先に述べたように、学生に有利に決められています。沢山の若い方々にSDSに入会していただき、日本の若者が活躍するスポーツの世界と同様に、世界の中で知的な鎬を削り切磋琢磨して、SDの世界でも日本発の活力を大いに発揮していただけませんか。

以下のURLから進むと、入会の案内があります。
http://www.systemdynamics.org/howtto_join.htm

 

SD閑話−9 了