SD閑話-3 2010年6月2日 松本憲洋(POSY Corp.)
タイトル:「
定性的なシステムズ・アプローチ

システムの本質に迫って問題を解決する考え方や方法論をシステムズ・アプローチと言います。
システムズ・アプローチの始まりは複数ありましたから、フォレスター(J.W.Forrester)先生から始まったシステムズ・アプローチをシステムズ・アプローチby JWF と表現することにしましょう。
これは、定性的なアプローチと定量的なアプローチとから成り立っています。
今回は定性的なアプローチについて、その概念から具体的な方法までお話したいと思います。

 

1.ハードシステム・アプローチとソフトシステム・アプローチ

我々が問題を解決したいと思う状況を思い浮かべてみましょう。
状況は二種類に分かれることに気付きます。
その一つは、現在の状況(S0)を関係者全員が良く分かっていて、ほぼ同じ認識を持っている。
そして、将来どのような状態(S1)に持って行きたいかの共通認識が明解になっている場合です。
しかもそんな場合には、S0からS1へ到達するための選択肢は複数あって、その中の最良の選択肢を見出すことが問題を解決することになります。
すなわち、関係者の価値観のコンセンサスが得られていて、現状認識についても十分な合意が得られている場合ということになります。
このような場合には数式モデル化が可能で、その最適解を求める問題に置き換えることができそうです。
数式モデル化のためには色々な方法論や理論があり、オペレーションズ・リサーチ、システム分析、システム工学、複雑系理論などがそれにあたります。
システムズ・アプローチby JWF の定量的なアプローチであるシステム・ダイナミックスもこの範疇に含まれます。
このような取り組み方ができる場合には、システムの構造が確定しているわけですから、この方法論のことをハードシステム・アプローチと呼んでいます。

 

もう一つの状況は、我々が解決したいと考えている問題に関係する人々が複数いて、しかも現在の状況(S0)に対する認識も、将来到達したい状態(S1)についても、それぞれで異なる見解を持っている場合です。
このような場合には、S0からS1へ到達するための選択肢と言っても問題全体が明確ではなく、当初はとても数式モデルでは表現できません。
さらに、関係者間で価値観そのものが異なっている場合さえもあるわけです。
ですから、話し合いによって、問題となっている現状について各人が許せる範囲内で共通の認識を持ち、価値観についてもまた将来の望ましい姿についても、各人が許せる範囲内で共通の目標を設定する必要があります。
仮に、数式モデル化ができるにしても、共通の認識と共通の目標設定の後になります。

 

会社を取り巻くステークホルダーは正にこのような状況に相当する場合が多いですし、会社内の内部組織間でも同じような状況に皆さんが悩まれているのではないでしょうか。
このような取り組み方では、システムの構造が確定していませんから、ソフトシステム・アプローチと呼ばれています。

 

さて、上述のように全てが複雑でかつ多元的な状況では、関係者間で現状を眺めた後に、それに対する個別の見解についても眺めることができる、皆に共通な手段が必要になります。
それを使って現状を表現し、それぞれの関係者の頭の中にある見解、すなわちメンタルモデルを視覚化して表現し、それらを眺めながら関係者が共通の現状認識から到達すべき姿を議論するのです。
このような過程を辿るソフトシステム・アプローチとして、ピータ・チェックランドが提唱しているソフトシステムズ方法論(SSM)があります。
SSM
では、表記法の自由度が高いリッチ・ピクチャーを使っています。
しかし、システムズ・アプローチby JWFでは、ソフトシステム・アプローチに適用するためには、定性モデルによる手法を活用します。
定性モデルのための表記ツールとしては、因果関係図(CLDCausal Loop Diagram)と時系列挙動図とがあります。
これらの表記法の自由度は、リッチ・ピクチャーに比べると、少々制限がきついと言えます。

 

ところで、我々が解決したいと考えている問題を、完全な数式モデルで表現して、ハードシステム・アプローチにより最適解を求めることはできないが、曖昧さが残る形の数式モデルでは表現できて、望ましい方向性を定性的に探ること だけならできる場合があります。
たとえば、
集中的に投資するために、顧客ロイヤリティを高めるための幾つかの手段の中から、最も効果的な手段を探し出す問題とか、企業業績に影響している様々な情報遅れ要素の中から、効果的な結果をもたらす対策を打つべき 要素を選択する問題などです。
このような場合には、定量モデルを傾向分析用に用いると、問題を解決する上で大変有効です。
したがって、私はこのような形式で活用するモデルのことを、“傾向分析用モデル”と呼んでいます。
実際のシステム・ダイナミックスの活用においても、傾向分析用モデルとして定量モデルを用いる機会が多いように感じています。
しかし、今回の話の中では、単純な定性モデルだけを取り上げて、傾向分析用に用いる定量モデルについては、また後の閑話に譲ることにします。

 

2.定性モデルの表記ツール

我々はモデルと言う単語をいろんな状況で使います。
モデルは、実物ではなく、実物の特徴を表現した偽者です。
さて、システムズ・アプローチでは、その偽者をどのように使いたいかと言うと、実物を代表するある特性が、その特性自身と外部の条件変化とによって、時間的にどのように変化するかを見たいのです。
しかも、その実物の一部分だけがどのように変化するかではなく、全体がどのように変化するかを見たいのです。

 

システムズ・アプローチby JWFでは、そのような時間的変化を定性的に把握するために定性モデルを使うわけで、そのモデルの表記法として、因果関係図と時系列挙動図とが準備されていることを既にお話しました。
時系列挙動図とは、そのモデルに含まれる主要な要素が、時間経過と共に、どのように変化するかを予想する図面ですからツールとしては簡単で、後で少しだけ触れることにします。
以降では因果関係図について詳しくお話しします。

 

システムズ・アプローチでは、“モデル”の概念を次のように考えています。

@ 対象としているシステムを、注目している視点から眺める。

A 捨象と抽象により、その視点における本質的な“要素とその関係”を抽出する。

B その“要素とその関係”を再合成して得られるシステムがモデルである。

 

システムズ・アプローチにおける関係とは因果関係のことです。
原因としての要素が大きくなると、結果としての要素がどうなるかと言う関係です。
原因に対して結果が同じ傾向に変化する場合を、“Same Direction”と呼び、逆の傾向に変化する場合を“Opposite Direction”と呼びます。
原因から結果に向けて両者を矢印で結びますが、Same Directionは青色に、Opposite Directionは赤色に着色するのが一般的です。
矢印の傍に、Same DirectionSや+を、Opposite DirectionOや−を描くこともあります。
因果関係が比較的短時間のうちに現れる場合と、原因に対して結果が時間をおいて現れる場合とがあります。
後者の時間遅れがある場合には、矢印の上に短い線を二本加筆します。

 

さて、商店経営に関して、仕入れと販売に注目して、主だった要素を選択し、それら二者間の因果関係を以下に描いてみます。

 

需要  販売

販売  在庫

在庫  品切れ

品切れ  口コミ評判

口コミ評判  需要

販売  口コミ評判

納品  在庫

在庫  発注

発注  納品


  

二要素間の因果関係をさらに繋いでいくと、上方の図になります。
これを因果関係図(CLDCausal Loop Diagram)と言います。
図の中には、矢の先がその前の矢の元に連なって、それを辿るうちに元の位置に到達するループが3つ存在します。フィードバック・ループと呼びます。
その中に、丸Rとか丸Bとか描いてあります。
RReinforcing Loopで、一定の方向に強化(負の強化もあります)されることを、丸BBalancing Loopで、いずれかの値に収斂することを意味しています。

 

原因と結果の傾向が逆になる繋がりであるOpposite Directionがループの中に奇数個あると、ループを巡るごとに、要素の大小が交互に変りますから、それらの要素の値は一定の値の周りに収まります、したがって、Opposite Direction が奇数個あればBalancing Loopになります。

 

商店の経営者は、自分の仕事を仕入れと販売の視点で見つめるなら、この因果関係図に近い仕組みで商店経営を行なっていると認識するはずです。
すなわち、経営者は頭の中にメンタル・モデルとしてこのような構造を蓄えているのです。
したがって、因果関係図は関係者のメンタル・モデルを目に見える形で表現するための手段でもあるのです。
ある問題に複数の人達が関係して議論を進めるうちに、互いに相手の考えが分かったつもりになったが、次のステップに進んだところ、実は理解が食い違っていたというようなことがよく起こります。
それは、互いのメンタル・モデルを理解していたのではなく、表面的な言葉だけを聞く人が都合の良いように解釈していたに過ぎなかったからではないでしょうか。
情報交換が曖昧すぎたのです。
因果関係図のように互いに目に見える形で表現して、それを眺めながらその周りで議論するなら、明確な共通認識のもとで互いに許容できる範囲に結論を導くことができるようになります。

 

このことは、複数の関係者間の問題解決だけではありません。
我々が文章をまとめるときに、構想を練って、一先ず文章化して、推敲を重ねます。
さらに、時間をおいて読み直します。
この過程で、最初に想定していた結論とは異なる結論に気付いたり、論理の自己矛盾に気付いたりします。
実は、定性モデルを描くときも、全く同じ現象が現れます。
我々は、定性モデルを描くときには、往々にして現状のAsIsモデルから描くことが多いと思います。そのAsIsモデルを描いた後でそれを眺めて、現状の問題を解決するために、付け加える要素はないか、害となっていて削除すべき要素はないか、どこかにリンク線を加えたり、あるいは既存のリンク線を削除すると問題解決に向かうのではないかなどを検討します。

 

しかし、実際にやってみると良く分かるのですが、現状のAsIsモデルを描いている途中で、その業務プロセスなどのモデルの構造の不具合さに気付きます。
自分の頭の中のメンタル・モデルを視覚化することで、自分自身が自分のメンタル・モデルで誤魔化してきた事実に気付くようなのです。
したがって、定性モデルはコミュニケーション・ツールであると同時に、自己学習のためのツールでもあるのです。

ところで、現状のAsIsモデルを描いている途中で、改善策を次々に思い浮かべると話しましたが、そこ では辛抱してその場でAsIsモデルを中途半端に変更しないことです。
思いついた内容はメモをとるだけにして、AsIsモデルはAsIsモデルとして完成させ、その全体を眺めた上で、改造あるいは革新すべき点を議論すべきだと言うことを付記しておきます。

 

さてここで、因果関係図の表記法をまとめておきましょう。
要は、対象としているシステムの因果関係が表現できればいいわけですから、描き方は色々あります。
ここでは、パワーシム社(Powersim Software AS:ノルウェー)が提供しているStudio 8 を使って、因果関係の表記法と、フィードバック・ループの表記法を以下に記します。
このツールは、本来、定量モデルを構築するために準備されているのですが、編集がやり易いことから、定性モデルの表記においても都合よく利用することができます。
なお、きれいで分かり易い因果関係図を描くには、上記のツールの類が便利だとは思いますが、あくまでも因果関係が描ければ良い訳ですから、手描きでも、あるいは汎用のお絵描きソフトでもいっこうに構わないことは言うまでもありません。


 

パワーシム社では、50要素までモデルを描けるStudio 8 Expressをフリーで提供しています。
60
日毎に更新する必要がありますが、何度でもインストールして使えますし、後刻商品版を購入いただいた場合にも、Expressで作ったモデルをそのまま商品版に移行してお使いいただけます。
ダウンロードの方法については、末尾に記載します。
また、定性モデルの表記に使うだけであるなら、このソフトウェアの使い方は容易です。
詳しい使用方法はソフトウェアのトップ画面の上端にある“help”ボタンを押せば見ることができますが、簡易マニュアルが、以下のURLからダウンロードできますので、ご利用下さい。

http://www.posy.co.jp/manual-studio.pdf

 

次に、時系列挙動図について少しだけ説明しておきます。
先ほどお話した商店の経営者が時々仕掛けている新聞折り込み広告などの販売促進活動について考えて見ましょう。
商店主は、新聞に折り込み広告を入れたり、店頭にキャンペーンの飾り付けをするために費用をかけます。
その結果、需要が喚起されて商品販売が上向きますが、それにはある程度の遅れ時間(リードタイム)がかかることを商店主は知っています。
では、商店主は原因の販売促進費用と結果の販売額とが時間的にどのように変化すると考えているでしょう。
もちろん、その量的な判断もしているわけですが、その前に販促費用をかけると、どのタイミングで販売が上向き始めるかという時間的な相互の関係が重要になってきます。
そのタイミングを見誤りますと、せっかく販促したにもかかわらず品切れを起こしたり、在庫の山を築いたり、あるいは資金不足に陥ってしまいます。

 

時系列挙動図は、対象としているシステムの主要な構成要素が時間的にどのように変化するか、あるいは将来にわたって変化して欲しいかについて、原因と結果のタイミングについて注視して描く挙動図です。
いずれの図でも時間軸は共通で、縦軸の変数値は傾向を示すだけで数値としては意味をなしません。
もちろん、原因については、関係者のメンタルモデルからではなく、既成の事実に基づくものもありますので、その場合にはその定性的な時間経過の傾向を原因要素の時系列挙動図として採用します。

 


3.因果関係図は必ず描く必要があるのだろうか?

フォレスター教授が1960年ごろ発表された論文“Production Distribution System”に触発されて、1961年に当時の通産省からMITに留学され、帰国された後にシステム・ダイナミックスを使って学位論文をまとめられた先達がいらっしゃいます。
フォレスター教授がシステム・ダイナミックスを創案されたのが1950年代半ばと言われていますから、日本人がシステム・ダイナミックスに取り組んだのは随分早かったわけです。
そのことは1972年に“成長の限界”として発刊された“人類の危機に関するプロジェクト”を推進したローマ・クラブの活動において、日本国内の産業界と学会とが協力してローマ・クラブ日本チームを形成していたことからも伺い知ることができます。

 

しかし、当時のシステム・ダイナミックスに基づくシミュレーションの実行は大変だったそうです。
当時、卒論や修論を、システム・ダイナミックスを使ってまとめられた方々のお話を伺うと、指導教授にお願いして企業の汎用コンピュータを夜間に使えるように準備してもらい、一晩に一ケースのシミュレーションの実行がやっとできたとのことでした。
プログラム言語は、ダイナモ、ベーシックあるいはフォートランです。
したがって、数式をプログラム言語で記述するだけですから、モデルの構造を視覚化するための因果関係図は不可欠だった訳です。

 

【 閑話^2

1960年当時そんな苦労をしてシステム・ダイナミックスを使って論文を書いて卒業できた人々が、1990年代には官庁でも企業でもトップに近いポジションに着いていました。
その頃、コンピュータのダウンサイジングとGUIの発達とによって、システム・ダイナミックスは世界的には再び日の当る場所に出ていたのでした。
しかし、学生時代にシステム・ダイナミックスと格闘し、今は組織のトップに位置する人たちにその当時尋ねますと、システム・ダイナミックスは本当に面白かったと楽しそうに語り、その後で、“でもね、あれは実用的なツールではないよね”と、念を押される方が多くいらっしゃいました。
当時の汎用機の能力に比べ、1990年代でもご自身の机の上にあるPCの方がはるかに高い能力を有していたにも拘わらず、そのような 上層部の考えが組織の中で主流を占めていたのだろうと思われます。

このことが日本では、システム・ダイナミックスが実用的に活用されてこなかった原因の一つではなかろうかと、私は想像しているのですが、皆さんはどう思われます?

【 閑話休題 】

 

さて、マッキントッシュでは1990年以前から、ウィンドウズでも1995年からPC上で極普通に 図視化ができる環境が整いました。
その結果、定量モデルの表記法であるフロー・ダイアグラムを現在ではPC上で描くことができます。
そのフロー・ダイアグラムそのものが、因果関係を示しているのです。
では、定量モデルを構築するとフロー・ダイアグラムができる訳だから因果関係図は全く不要かと言うと必ずしもそうとは言えません。
と言うのは、因果関係図が不可欠なのは、対象とする問題について現状認識と目標とを関係者で協議して、皆が許容できる範囲に導くソフトシステム・アプローチにおいてであったことを思い出して下さい。
そのためのアプローチにおいては数式モデルに落とす前の段階であるだけでなく、仮に数式モデルで表現できフロー・ダイアグラムが描けたにしても、その場合のモデルの構造が微細すぎて、関係者がそれを眺めながら討論するには不向きなのです。

 

このことはモノ造りの設計過程をご存知の方には、設計プロセスから良くお分かりいただけると思います。
設計では、概念定義 → 基本計画 → 基本設計 → 詳細設計 → 生産設計と進みます。
業界によって名前が違ったり、一部のステップをスキップしたりすることがあるとは思いますが、いずれにしてもそれぞれのステップで関係者が協議して設計内容を固めていきます。
各ステップの図面やドキュメントは、その段階で協議し易い粗密さを有しているわけです。
因果関係図は、粗いメッシュの概念定義や基本計画に相当するステップから、生産設計に相当する定量モデルの緻密なフロー・ダイアグラムのステップまで、協議者のレベルに合わせて粗密さを変えて表記することができます。
これについては、“因果関係図は粗密によるレイヤー分けができる”と表現しています。

 

しかし、対象とする問題について現状認識も目標も、関係者間で共通の認識が得られている場合はそうではありません。
これは例えば、各種のマテリアル・フローやサプライ・チェーンなどでよくあるのですが、モデルがそれほど大きくない場合には、因果関係図の表記をスキップして、直接、定量モデルのフロー・ダイアグラムを描き始めれば良いと私は考えています。

 

その場合に、フロー・ダイアグラムのレベルとフローレートとの間に隠れている因果関係が存在することを下図により説明します。
フロー・ダイアグラムには、溜まるもの(レベル):Integration、溜めるもの(フローレート):Input、放出するもの(フローレート):Outputが主役として存在します。
この三者間の因果関係は、フロー・ダイアグラムの中で明確には示されていませんが、因果関係としては図の下半分の関係が必然的に存在しています。









 

 

 


このことを認識してフロー・ダイアグラムを眺めると、フロー・ダイアグラムを因果関係図として理解できます。

 

4.定性モデルの具体的な構築法

1999年にロンドンのとあるホテルの会場で、Powersim社の講習会を受講しました。
講習2日目の朝、講師が当日の新聞を配って、皆で討論しながらこの記事を分析して因果関係を描いてみましょうと話しました。
好都合なことに、当日の新聞にはタラ魚の不振と漁船の規制に関する記事が掲載されていたように覚えています。
私はこのワークに大変新鮮な感じを受けましたので、帰国してから毎朝新聞を見ては、どれかの記事を定性モデルとして描いてみました。
結果としてこれはなかなか良い方法で、新聞情報を漫然と読むのではなく、その内容を構造的に捉える訓練になったように思います。
最近は新聞を読みながら、紙に定性モデルを描いてみることはありませんが、頭の中で問題を構造的に捉えることができているように思います。
皆さんもやってみませんか。

 

さて、定性モデルを描こうとするときには、以下に記載するようなステップを辿ると良いと思います。また、取り上げる対象としてはご自分が取り組んでいる問題ということになりますが、ビジネス・プロセス・モデルの場合には、そのAsIsモデルの構築から始めることが多いと思います。
ただ、
訓練としては新聞記事を対象としても構いません。

 

@   問題は何か?

A   問題をどのように認識しているか?

B   分析を始める貴方の立場は?

C   貴方の分析の目的・狙いは?

D   予想している解決策は?

E   問題に関係する要素は?

F   それぞれの2つの要素間の関係は?

G   定性モデル(因果関係図・時系列挙動図)を描く。

H   各自のメンタル ・モデルを最大限に引き出して、現在の状況を分析し、問題点を
   明確に表現する。

I   その問題を解決するための、リンクの加減、ループの加減、要素の加減等を
    検討したうえで、定性モデルを参照しながら、問題解決のシナリオを創出する。

 

最後に、Studio 8 を使った因果関係図の描き方(前述のG)を詳細に記します。

@ 目的の視点から問題(対象)を眺め、要素を抽出し、SDモデルの適当なシンボル
を最小化して、それに抽出した要素の名前を名詞で付けて並べる。
錯綜を避けるために負のイメージの名前は付けない。Ex.利益減少、需要減など。

A 似かよった要素をグルーピングして色分けする。

B グループごとに集めて、因果関係を考えてリンク線を引く。
     正方向は青色、逆方向は赤色を付ける。

C 多分、スパゲッティ図になる。釣り糸のもつれを解くように要素を動かす。
     要素に付いているリンク線は外れることはない。

D 交差が残り、許せない場合には、CLDの分割を先ず検討する。
     簡易的に交差を除くには、リンク線が交差する原因となっている要素のダミーを
     作って配置する。そのダミーの名前は、元の要素の名前の後ろに数字をつける
           などして、ダミーであることが分かり易いような工夫を施す。

E CLDができたら、デザインモードのアイコンをクリックしてOFFにし、警告マークの
表示を消す。

F 他のアプリケーションで、できあがった因果関係図を使う場合には、イメージ・コ
ピー機能を使ってコピーして、他のアプリケーション上にペーストする。

 

5.おわりに

実際に自分の抱える問題を因果関係図に描いて眺めて見ませんか。
描いて視覚化することで、自ら解決の方向が見えることもあるものです。

 

また、平均すると2ヶ月に一度程度、システム・ダイナミックスの紹介とSDツールであるStudio 8の習得のためのオリエンテーション・コースを開いています。通算で40回になります。
コースでは、主に定量モデルを取り上げていますが、毎回、日経新聞の適当な記事を取り上げて、定性モデルの作成を宿題にしています。
次回以降の23回分の閑話では、最近のコースで取り上げた事例を紹介してみましょう。

 

 

【 附 録 】
評価版Ps Studio Expressのダウンロード方法

Powersim社の評価版です。
SD
に関して初心者の方が、SDの実用化の可能性を探るために、SDの概要を学習した上で、Studio8を評価したい場合などにお使い下さい。

ダウンロードの方法

  @ http://www.posy.co.jp/PS-download-f.htm を開く。

  A 上端の“評価版のダウンロード”をクリック。

  B ■評価版:Studio Express のダウンロードにある空色のボックスをクリックすると、Powersim社のダウンロードのページに入りますから指示に沿って進んでください。

Studio 8 Expressの機能

  ▼再インストール:繰り返し可能

  ▼機能:商品版と全く同一機能(具体的には、その時点で最新のProfessional版)

  ▼要素数:50以下

  ▼有効期間:Powersim社がメールでプロダクト・キィを送付した後60日間

 

 

SD閑話-3 了