D閑話-寄稿-5 2012年3月29日 
石井 裕  : 就実大学薬学部・教授
コメンタリ:「放射能汚染と暮らす」
福島第一原子力発電所の事故による放射能汚染を理解するために

東日本大震災が発生して1年が過ぎました。地震・津波に対する復興事業は遅々としてではありますが、前向きに動き始めてきています。
しかし、地震がきっかけで発生した人災である東京電力福島第一原子力発電所の事故処理は、単に停滞しているだけでなく、時間が経つにつれて、その深刻さが拡大しているように さえも感じられます。

取扱を一度誤ると、空間的にも、時間的にも限りのない災害をもたらすこのような原子力技術を、人間が便益だけを求めて、安易に使ってしまっていることを、端初に戻って考え直す必要 があると感じています。原子力利用は、事故が起きたときの災害の規模と範囲が、空間的にも時間的にも、有限に限定されている原子力以外の科学技術とは本質的に異なることを、私は 今回目の前で起きて初めて認識しました。人間はどうして事が起きる前に、そのことを推測して、体感的に理解できないのでしょう?

事故は起きないに越したことはありません。だが、起きてしまった。その時、どう行動するかにはその人の人間性が表れるように思います。放射能に関する知識を持たないままに、右往左往せざるを得ない状況は哀れです。分かり易いが偽りは無く信頼のおける”放射能事始”が、1年経った今でも求められていると感じています。今回のSD閑話では、システム・ダイナミックスには関係ないのですが、今の放射能不安に答えてくれる
”放射能事始”を紹介します。

さて、私は広島県福山市の出身であることを以前のSD閑話でお話しました。
福山での中学校の同期生の一人に放射線生物学を専門とする学者・石井裕氏がいます。阪大医学部放射線基礎医学講座で研究・教育に従事した後、就実大学薬学部で教授を務めている友人です。

彼は事故が起きた直後から、我々中・高等学校の同期生のメーリング・リスト(Olive10Tokyo)に、その時点毎の放射能問題について分かり易い解説をおよそ20回にわたり投稿してくれました。それをWebページ 用にコメンタリ(解説)としてまとめて、SD閑話へ寄稿してもらったのがこのページです。第1部は、メーリング・リストへ投稿した原稿が中心で、第2部が放射能に関する基礎講座です。
石井裕氏とコンタクトしたい方は松本までお知らせ下さい。彼からメールをお送りするように連絡します。                                         (松本憲洋)
                                       
石井裕氏の略歴
1943年生まれ
1967年東京大学農学部農芸化学科卒
1969年東京大学大学院農学系研究科修士課程修了
1969年大阪大学医学部放射線基礎医学教室助手、のち助教授
その間
1975年米国National Institute of Environmental Health Sciences, Visiting Fellow
1976年米国Brookhaven National Laboratory, Visiting Researcher
2006年就実大学薬学部教授


左図をクリックすると石井裕著、”コメンタリ:放射能汚染と暮らす”が開きます。


       目次

       はじめに

       第1部 拝啓 東京在住の同期生の皆様
       2011年3月から今年3月まで同期生のメーリング・リストに投稿した解説記事

       第2部 放射能汚染を理解するために
       T 放射能・放射線とは
       U 放射線の人体影響
       V 汚染の現状

       おわりに