SD閑話
-寄稿- 201173  

「ポートランド州立大学のSD教育
上原拓郎(ポートランド州立大学システム科学研究科博士課程経済学オプション)

 

ポートランド州立大学に留学中の上原拓郎さんから、同大学のSD教育について投稿していただきました。上原さんについてご存知でない方のために、少しだけ紹介させていただきます。

上原さんは政策科学の出身で、大学時代からシステムダイナミックスを研究分野の一部とし、またそれを政策分析に活用してきました。2007年からポートランド 州立大学システム科学研究科に在籍し、彼のメールによると、今春にはComprehensive試験にも合格して、現在は論文のプロポーザルを準備している段階だそうです。

私は2000年から2009年までシステムダイナミックス学会日本支部(JSD)の運営に関わっていました。その初期の2000年から2003年にかけては、JSDの建て直しの基礎作りの段階でしたが、上原さんには得意とする情報処理技術を活かして、JSDの各種メーリングシステムなどの情報基盤の準備を進めてもらいました。その後、留学する少し前までJSD事務局幹事として会の運営に尽力してもらったことに感謝しています。

意思強固なスポーツマンで、今は2歳の坊やのお父さんでもあります。

さて、教育問題は単に初等・中等・高等教育制度の問題としてではなく、国力や国民の幸福度を左右する根本的な問題になっていると感じています。個人的には若い頃もっと視野を広く持つべく志し、学問も趣味もがむしゃらに取り組めば良かったと、取り返せない自分の過去に対する悔悟の念に駆られます。社会的には、平等主義の日本の教育制度の縛りと、国民の現状満足の思いの中では、日本の科学・教育のレベルは、世界の中で相対的に低下するのみで、下降のレインフォーシング ・サイクルから脱却できないのではなかろうかと悲壮感に打ちひしがれています。

週刊東洋経済の72日号の記事によると、ハーバード大学への留学生の数が毎年低下傾向にあるのは、中国、韓国、インド、シンガポール、日本の中で、日本だけのようです。その他の本格的な 日本からの留学生数についても減少傾向にあると報道されています。

そんな中で、当初の目標を自分のペースで一歩一歩実現しつつある上原さんには、今まで通り、彼の道を切開いていただきたいと願っています。彼の行動や活動は、周りの人たちの気持を 前向きにして明るくしてくれます。

 

ポートランド州立大学のURL  http://www.pdx.edu/

 

留学を検討されている方で、上原さんと情報交換したい方は、ここをクリックして松本までお知らせ下さい。上原さんに連絡して、差し支えなければメールをお送りするように伝えます。

                                     (松本憲洋)
  
 

ポートランド州立大学は米国オレゴン州にある、州最大の公立大学です。システムダイナミックス(SD)はシステム科学研究科で教えられています。本研究科では、システム哲学、システム理論、人工知能、ニューラルネットワーク、ゲーム理論、エージェント・ベース・シミュレーション(ABS)、SD等、システム科学に関連する様々な分野を学ぶことができます。
 

本研究科で特徴的なのは、他研究科との共同プログラムである点です。学生はコアかオプションを選択することができます。コアはシステム科学を中心に学び、必要に応じて他研究科の科目を履修し、システム科学の「発展」に貢献することを目的としています。オプションはシステム科学のコア科目を履修するとともに、他研究科の科目を(数学、社会学、心理学、経営学等)中心に学び、システム科学を「適用」することを目的としています。
 

本研究科の博士課程の学生は、研究助手あるいは教務助手として、学費免除及び給付金を得ることが可能です。私は、経済学オプションのため、ミクロ経済学と環境経済学を学部生に教えています。他の学生は、ABS、数理モデリング、生態経済学等を教えているようです。
 

研究科には二つのSDコース、SDSDIIがあります。SDは基礎編で、SDの概念、モデリングプロセス等を学びながら、同時に自分で選んだプロジェクトに取り組みます。授業は、コンピュータラボで行われ、授業の前半は、インストラクターが学習するトピックの概要を説明し、適宜、ディスカッションが行われます。後半はオンラインで提供されるマテリアルに基づいて、実際にモデリングを学習します。授業は、ネットワークに接続されているので、自宅から動画の他、ラボのプロジェクターに表示されているマテリアルを見ながらディスカッションに参加することも可能です。
 

SDIIは上級コースです。John Sterman Business Dynamicsの主に後半のトピックを取り上げ、練習問題をたたき台にして議論をすすめるという形をとります。また、学生は各自トピックを決め、授業と平行してプロジェクトに取り組み、コースの最後に発表します。私は、資源と人口のダイナミックスに不均衡経済から均衡経済への調整過程を取り入れた資源経済モデルに取り組みました(本研究の一部は、指導教官が昨年韓国で行われた国際システムダイナミックス学会のパラレルセッションで発表しました)。本コースもオンラインでの参加が可能で、昨年は北欧からの参加者がありました。

 

                                          

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