2005年の初夢

今年は随分と変な夢を見ました。

かつて津に居た頃楽しんでいた愛艇Hispaniola号(小さな帆掛け舟です)で、いつものように伊勢の南に位置する的矢の母港から、伊勢湾に一人でクルージングです。正月の頃は、天気がいいと海の上が意外と暖かいのです。冷たい北風でなく、快い西風が吹いています。

しかし、どうしたのでしょう、正月気分のクルージングが暗転です。急に強い北風に変り、しかもくるくる強風が回るのです。三角波が舟の周りで、水面を槍で突き上げるかのように次々に沸き立ちます。縮帆しましたが操船不能です。ローリングとピッチング(横揺れと縦揺れ)が不規則に連動して、気がついたときにはマストを下にディープ・キールを上にして転覆したHispaniola号のコクピットに中でもがいていました。ウヮー、ブクブク...それからの記憶はありません。

どのくらい経ったでしょう。陽の高くなった砂浜に続く草原に仰向けに倒れていました。見たことがある景色です。どうも昔よく行った神島の太平洋側の海岸線のようにも思えました。でも違うようです。私の人差し指ほどの小人が私のお腹から胸にかけて走り回っています。驚いて体を起こそうとしましたが、体が動きません。草原に細いロープで縛り付けられています。

    
その時、高らかにファンファーレが鳴り響き、数十人の兵隊を引き連れたハンサムで長身な皇帝のお出ましです。尋問があり色々なことを皇帝陛下と話しました。驚くことに、2時間後には中指ほどの皇帝陛下と私はすっかり意気投合して、まるで10年来の友人のようになっていました。

小人は人間と同等以上の能力を持っていてしかも生命力が旺盛な上、時刻を早く進めたり、人間と同じ速さで進めたり自由にコントロールできるのです。ただ、皇帝陛下には全てがうまくいって刺激が少ないことが最大の不満のようでした。それで、皇帝陛下と私は業務提携することにしました。私が人間の国に再び戻り、小人の国の国民に出稼ぎに来て、失敗することによる刺激を受けてもらうことにしたのです。

仕事ですか。それは、経営問題、環境問題、政策問題などを解決すべき立場の人たちの机の引き出しの中で、その人たちの実世界を模した仮想世界を出稼ぎの小人が築くのです。例えば、新しい事業を推進することになった事業部長の2段目の引き出しの中には、その事業のミニチュアの模擬事業が出稼ぎに来た小人によって動かされています。

          

事業部長は事業を進めるにあたって、その引き出しを開けます。そして、どのようなビジネス・プロセスにして、どのような戦略目標を設定して、どのようなフォーメーションをとれば最大の結果が得られるかを、小人たちを使って試行錯誤しながら求めます。そうなんです。小人たちは、時刻を早めてビジネスを実行できますから、何度でも簡単にビジネスの疑似体験が可能なのです。そして多くの場合は、関係する部下とともに小人たちのビジネスの進め方を眺めながら、実世界で採用すべき最終的な戦略や運営条件を決定することになります。

小人のおかげで、私が推奨する”モデル・ベースト経営”の効果は絶大です。お客さんは大喜びです。この小人の世界は環境政策の決定にも有効に使えるので、行政機関からも引く手あまたです。

私の掌の上の皇帝陛下と二人でカンラ・カラカラと高笑いしていましたら、隣のベッドからピシャッとおでこに衝撃。
「お正月からうるさいわよ!」
あっ、夢か!

お年玉をもらいに来た孫に読んで聞かせたガリバー旅行記と、システム・ダイナミックスによるモデリング&シミュレーションの効果が、ほろ酔いの初夢になったようです。

  皆様、今年もよろしくお願い申し上げます。

          松本 憲洋